中学受検を目指す受検生・保護者の方へ
中学受検のメリット・デメリット
【メリット】
学校ごとに異なる教育理念があるためお子さんの長所を伸ばせられる
私立中学校や中高一貫校は学校ごとに異なる教育理念を持っています。その理念を基準に学校を決めることで、子どもの長所や興味を集中的に伸ばすことが可能です。英語学習に力を入れている、選択授業のバリエーションが広い、自由度が高いカリキュラムが組まれているなど、その内容は様々であり、子どもが持つ目標に向けて手厚いフォローが受けられます。
お子さまの個性と将来の可能性を伸ばせる
私立中学校や中高一貫校には、それぞれの教育理念があります。「個性や自由な発想力を尊重している」や「グローバル教育、ICT教育、探求学習に力を入れている」など、校風も教育方針もバラエティに富んでいます。また新型コロナ感染拡大時での学校対応では、一般的な公立中と私立中とで、大きな差が生まれました。これらのように、入試制度改革やIT技術の進化への対応、いざというときの対応がどのようにされているかは、お子さまの勉強や将来にも大きく関わります。各校さまざまな教育理念や各種対応の中から、お子さまの性格や実現したいことに合う学校に入学できれば、お子さまの個性と将来の可能性を伸ばすことができます。
大学受験に向けた勉強がしっかりできる
私立中学はほとんどが6年間の中高一貫教育を行い、大学入試を見据えた学習を行っています。そのため公立中学よりも学習進度が早く、高3までの先取り教育を行い、残り1年を大学入試対策に充てるカリキュラムになっています。高校受験というハードルが無い分、しっかりと準備を行い大学入試に挑めます。系列に大学を持っている中高一貫校では、エスカレーター式で進学することによって高校受験・大学受験が必要ないケースもあります。受験への準備が要らない分、部活動や子どもが興味を持っている分野の活動などに専念しやすい環境が得られるでしょう。大学受験をする場合であっても、中高一貫であれば6年間という長いスパンで準備を進めていけるため、大きなアドバンテージが得られます。
高校・大学受験の負担が少ない分、のびのびと学習できる
私立中学校の多くは中高一貫教育を行っています中高一貫校は、大きく3つに分かれます。学習進度が早い学校、探求学習や協働学習に力を入れて学習内容が深い学校、その両方の学校とあるのが特長です。
「早いうちから大学受験の準備をしたい」という理由で中学受験を考える方も多いようです。私立大学の入学定員厳格化によって、早慶・GMARCH・関関同立など、人気私大の大学入試は難化しました。ですが、系列大学や他大学との提携を行っている私立中であれば、エスカレーター式の内部進学や優遇制度により、その大学へ入学できる可能性も高くなります。
高校受験や大学受験に大きな労力を割かなくて済む分、部活や課外活動など、さまざまな学習に多くの時間を費やすことができ、お子さまの得意な分野を伸ばしたり、新しい発見につなげたりすることができます。
知識やスキルが身につく
中学受験のための学習は、小学校の学習内容とは大きく異なります。多くのお子さまが小学4年生から準備を行うほど、膨大な知識を身につけていく必要があるため、中学受験のためだけでなく一生ものの知識を身につけることができます。
中学受験は、一般的に小学4年生からはじめるケースが多く、約3年間の長期戦になります。長く続く受験勉強の中で、ときにはお子さまが困難な状況に立たされることもあるでしょう。そんな困難を一つひとつ乗り越えることで、辛くても逃げずに立ち向かってやり抜く力が身につきます。もっと前向きな点としては、中学受験での経験は大学での研究だけでなく仕事でも役立ちます。
例えば、中学受験では長期目標(志望校)を掲げ、その目標を達成するために中期目標・短期目標におとしこんで、その目標に向かってPDCAサイクルを回していきます。多くの中学受験塾では週単位でサイクルを回しており、自然と大学の研究や仕事で必要なスキルが身につきやすいのです。
学習面で手厚いフォローを受けられる
入学に試験を課す私立中学や公立の中高一貫校は、授業内容が高水準であることがほとんどです。例えば、ネイティブの先生を専任で抱えていることも多く、より実践的な英語を学べる環境を整えている学校もあります。そうした環境で学ぶことは、子どもたちの学力を効率的に高めていけるでしょう。
【デメリット】
小学校とは別の学習が必要となり、対策に多くの時間がかかる
小学校の勉強と中学受験の勉強は似て非なるもの。中学受験のためには「中学受験のための学習」が必要です。そのため、入試に対応できる内容を学習しなければなりません。また中学受験では演習量の確保も必要です。それらを学校とは別に学習するので、どうしても時間がかかります。
経済的負担が大きい
中学受験の対策をするには、学習塾での勉強が必要です。毎月の月謝と季節講習の費用などが必要になってきます。もちろん進学したら、授業料や教材費・通学費など学校費用が掛かってくるので、経済的負担は公立中進学よりも多くなります。私立中学に進学する場合は、充分な経済的準備が必要です。
保護者の負担が大きい
中高生と比べると、小学生は意思決定能力や自己管理能力が発達しきっていない年代です。そのため、保護者は学校選びや学習の進捗などに対して、こまめにフォローをする必要があります。しかし、干渉をしすぎると、子どもが自ら意思決定する機会を邪魔してしまう心配も出てきます。両者のバランスを取ることは非常に難しいため、接し方に頭を悩ませるなど保護者の負担は少なからずあるでしょう。
新たな友人関係を構築する必要がある
基本的にクラスメイトの顔ぶれは一新されるため、1から人間関係を作る必要があります。小学校からの持ち上がりが多い公立中学に行くことを考えると、最初の負担は大きくなります。思春期の6年間を一緒に過ごすことになる仲間たちということも考えると、お子さまの学校生活で大きなポイントになることがあります。
はっきりとした目的・目標を持つことが重要
中学受験を行うか否かは、どうして受験をしたいのかをしっかり考える必要があります。塾の送り迎えや家庭学習などご家族のサポートが必要となることも多く、明確な目標が無いと努力が続かなくなります。 ご家庭のご希望とお子さまの意思を確認し、納得がいく目的をもって対策を行っていきましょう。
子どもを勉強嫌いにしてしまう恐れがある
学習量が多くなりがちな進学校に入学することによって、勉強に嫌気が差してしまうケースがあります。授業についていけない、がんばっているのにテストの結果が思うように伸びないなど、計画通りに勉強が進まなかった場合には、必要以上に自信をなくす恐れも出てきます。また、学力の差を埋めるべく塾に通う必要なども出てくるため、家庭の時間が減ってしまう心配もあります。
中学受検をした方が良いのか?
お子さまの性格やご家庭の教育方針に合わせることが進路選びの基本ですが、それに加えて、お子さまが中学生や高校生、さらには社会人になった時の状況を考えてみると良いのではないかと思います。また、中学受験をすることに、お子さま自身の納得を得ることもとても重要です。現在、大学入試を筆頭に入試制度改革が進んでおり、IT技術も日々進化を遂げている中、2011年にアメリカの小学校へ入学した子どもたちの65%は大学卒業後、今は存在していない職業に就いているでしょう。さらに今後10~20年程度で、半数近くの仕事が自動化される可能性が高いとの予測もあり、保護者さまやお子さまの取り巻く状況はさらに変化します。
このような環境の中で、変化に対して素早く適切な対応を取っている学校、変化に対応できる力をつける教育を行っている学校であれば、お子さまも安心して通学することができるでしょう。
そして、もしその進路に進むために中学受験が必要なのであれば、受験にチャレンジしてみてもよいのではないでしょうか。
今からできる中学受検準備
<小学4年生>
中学受験に対応した進学塾では、小学3年生の3学期(2月)から授業が始まります。この時期から塾に通い始めて受験に備えるご家庭もありますが、必ずしもこの時期から通塾を始めなければならない、というわけではありません。とはいえ、集団塾であればカリキュラムが固定されているので、入塾時期が遅れれば、その進度の遅れをカバーするのは基本的にご家庭の役割になり、またお子さまの負担にもなります。しかし、早いうちから学習を習慣化できれば、学習量が増える小学5年生以降の勉強もスムーズに取り組めるようになります。「うちの子、もしかしたら受験したほうが良いかも……」とお考えの保護者さまには、家庭や塾での学習を通して、勉強のやり方を身につけておくことをおすすめします。まずは習習慣をつけ、塾を含めた生活習慣をつけることをおすすめします。次に受験生としての意識と心構えを保護者さまもお子さまも持つようにしましょう。その上で基礎学力をつけることが、小学校3年2月から小学校4年1月までにしておくことです。毎日30分集中して勉強しているか、が中学受験を具体的に考える1つの目安になります。
また、この4年生の時期に学校説明会や文化祭などの機会を利用して、受験する中学校の情報収集を開始しておくのが良いでしょう。
<小学5年生~小学6年生夏ごろ>
5年生のテーマは「実力をつける」です。単元学習が進んでいくのが理解不十分な部分や苦手教科が出てくるので、苦手や弱点を作らないことが大切です。もし出てきてしまったら、それを早期につぶしておくようにしましょう。
また、小学6年生夏までのテーマは、単元学習は総復習も終わっている状態にしておくことです。志望校の求める学習範囲・内容についての知識やスキルを身につけておきましょう。
一方で、第一志望校に近い内容の教育を行う学校を、学校見学やWEB説明会を通して探し、志望校を広げて併願校を決めていくことも行っておきましょう。入試情報をはじめ、校風やカリキュラム、特徴的な教育方針などを調べていくと、お子さまが興味を示しそうな学校が見つかります。もし塾に通うのであれば、面談などの機会を利用して、志望校選びについて塾の先生に尋ねてみることもおすすめです。中学校の校風や内情まで把握している塾であれば、お子さまに合った中学校を提案してもらえるでしょう。
<小学6年生秋以降>
小学6年生の秋以降は、入試過去問演習を中心に行います。第一志望校や併願校のものだけでなく、出願する可能性がある学校の過去問も解き、試験本番に備えます。
あわせて、過去問演習で見つかった弱点や抜け漏れを補う学習などを進めていきます。模試を受験し、正答率が高いのに間違えてしまった問題を見直して、なぜ間違えたのか原因を分析して、二度と間違えないようにするための対策を行います。この時期は本番直前ということで、勉強に熱が入って夜遅くまで勉強してしまいがちですが、不規則な生活が続くと体調に影響を与える可能性もあります。メリハリをつけ、なるべく規則正しい生活を心がけましょう。食事管理や睡眠時間管理など、健康管理は保護者さまのお仕事になります。
また、「受験本番が近づいてきているのに偏差値が上がらない……」と、なかなか結果が出ないことに、お子さまだけでなく保護者さまも不安になってしまうこともあるかもしれません。そんなときは、不安な気持ちを塾の先生に相談してみると、気持ちが楽になるでしょう。受験直前の学習の仕方や過ごし方についてなど、試験本番を万全の状態で迎えられるようにアドバイスしてくれる塾もあります。
保護者の皆様へ
中学受験をするなら、まずは「将来子どもにどんな大人になってほしいと思うか」のイメージをつかんで言語化してみることが大切です。次に、そのような大人になってもらうために必要な教育を中学から受けさせたいのか、高校から受けさせたいのかを考えてみてください。
保護者さまの思いだけで中学受験のために気軽に塾へ入れてしまうと、本当にお子さまをつぶしてしまうことになりかねません。それは高校・大学時代にまで影響を及ぼしてしまいます。
中学受験へ踏みきるには、まず保護者さまの覚悟が必要です。
なかには、中学受験をするかどうか相談に乗ってもらえる塾もあります。中学受験が視野に入ってきたら、お子さまと一緒に、ぜひ一度相談してみるといいかもしれません。
